納入事例

あの日はずっとヘリコプターの音が聞こえていた 伊勢志摩サミットテーブルセット製作記

2016年5月26日。伊勢から40km以上離れた、ここ津市でもヘリコプターの音が鳴り止まない。「最高限度の警戒態勢」というのはこういうことなんだな、と思いながらいつものように仕事をしていた。だけど、なんだかいつものようでないのは、やっぱり少し気になってるんだな。ふと時計を見るとお昼が近い。そろそろ、かな、席に着いたかな。作ったのはだいぶ前のことなので、今さら心配しても仕方がないのだけど、上手くいったのかな、とソワソワしてしまう。誰にも言っちゃ駄目だと言われていたから誰にも言ってないけど、あの椅子とテーブルは確かに今頃使われているはずだ。

遡ること二ヶ月ほど前、熊野のケータイの通じない山の中「工房南」さんの作業場に僕は居て、

椅子の座面を座りやすいように凹面にハツリ出さなくてはいけなくて、四苦八苦していた。

ほんの5ミリくらい窪んでカーブしているのだけれど、これだけでだいぶ座りやすくなるけど、これだけでだいぶハツリにくくもなる。

ハツっては座ってみてを繰り返して、その過程で何枚かはボツになってしまい、ようやく仕上がった6枚の杉ハツリ板は、工房南さんによって組まれた漆塗りの脚部と組み合わされた。

同時進行していたテーブルは、真ん中の板をハツっただけだったから、そんなに大変ではなかったのだけど、テーブルが大きいので普通より少し長くて、材料の選定に手こずったのだけど、うまい具合に長さも木目もぴったりの杉板が見つかりました。

テーブルは両脇がヒノキで、真ん中がスギのハツリ板・漆塗り。

工房南さんの作業場で最後に写真を撮って、後はもう僕たちの手を離れてしまう。

前日のセッティング。

で、当日。

(写真は外務省のページからいただきました)

伊勢志摩サミット配偶者プログラム・安倍明恵さんの昼食会。

あれっ、六脚作ったはずだけど……ま、いっか。そして、せっかく凹面にハツリ出したのに座布団使ってるし〜(>_<)、と思いきや、右側の女性・EU大統領夫人マウゴジャータ・トゥスクさんだけは座布団を後ろによけて直にハツリ板に腰掛けてくれてた(^^)。これが僕にとっての一番のご褒美。ちなみにEU大統領ドナルド・トゥスク氏のお父さんはポーランドの大工である、関係ないけど。そしてトゥスク夫人の右側に座っているメガネの方は「高校生レストラン」の村林先生(ドラマで彼を演じたTOKIOの松岡君に全然似ていないなどとは決して言ってはいけない)。

後で聞いたらテレビでも放送していたらしいですね(高校生レストランの相可高校メインですけど)。あっ、よく見たらメルケル首相の旦那さん・ザウアー氏も座布団よけてくれてた(^^)。たぶん、ハツリの板に座った最初のドイツ人です。

結局、夕方までずっとヘリコプターは上空を飛んでいて、たぶんずっと覚えてるであろうその日は暮れたのでした。

 

 

 

 

 

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