雑感

木の「欠点」というものについて……

木材に関わる業界以外の方々にはあんまり知られていませんが、木には品質に応じた等級が定められています。わかりやすいところでは節のある無しで、節が無い木の方が等級が高く、値段もまたずっと高いのです。簡単に言うと、節の全くない「無節」、小さな節のある「小節」、大小の節がたくさん入る「一等」という具合です。一般的には、美材主義といいますか、節のない色の均一な材が美しい、とされるのです。あくまで一般的には……。

ここに一枚の杉板があります。節は無いですが……

赤丸で囲んだ部分、木の白い部分に黒い筋が入っています。山に生えてる時に虫にでも齧られた跡でしょうか…。これがあるために、この板は「無節」という最高ランクではなくなります。天井板なんかに使おうという場合にはこういうのは避けられます。よくないですねこの黒い筋は……あくまで一般的には。

と、ここで、この板をハツってしまうわけですが………。

ハツってしまうと、木目もウネウネ踊りだし、元の平滑な木とはだいぶ風合いが変わってしまいます。と、同時に、おやっ、平らな時ほど黒い筋は目立たなくなっています。

少し離れて見ると…

もうどうでもいいんではないだろうか………。エ◯カ様ならきっと「別に…」と言ってくださるに違いない。

また、別の板ですと…

左の上方に小さな節がありますね。

拡大すると…

あぁ、これはいけない、これは「欠点」ですね、無節の等級から陥落です。ランクが落ちます……あくまで一般的には。

 

これもハツってしまえば…

なんかもうどうでもよくなってきた。別にエ◯カ様でなくたって「別に」と言いたくなる。

一見「欠点」とされるものでも、ハツってしまうことでだいぶ救えてしまうような気がしてきます。。板をハツることで文字通り「欠点」もハツり飛ばしてしまうのだ。

結局、何が「欠点」だというのは人が勝手に決めたもので、木からしてみれば知ったことではない。そんなものは全ての馬鹿馬鹿しい差別や偏見と同じく人の心の中にしか存在しないものだ。

材が先にあり、後で人がやって来てこれは良いだのあれは悪いだと神のごとく審判する。それは流通や商売には便利な符号には違いないけれど、それ自体が建築を良くしたりするわけではないし、設計者が「無節」と図面に書き込めばその建物の美しさが保証出来るわけでもない。むしろ、そういう表面的な美しさだけを求める歪んだ美材主義は、薄くスライスした無節の板を修正材に貼り付けて売る、という美意識と倫理観の低下を招いたし、木目をプリントしたボードですら立派な建材になってしまった。糊で貼り付けたものはいつかは剥がれる。何十年か経ってペローんと剥がれて垂れた天井板を見るたび、薄っぺらい美材主義の末路を見た気がする。

 

と、小難しいことを考えつつも、今日もハツってます。。。

 

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