あんまり鉋を使わない向井ですが、時々は使います。鉋の裏が無くなってしまったので、「裏出し」という、金槌で刃を叩いて少し曲げる作業をしました。
「金床」と呼ばれる台の上で鉋の刃を叩くのですが、自分のは自家製の鉛で出来たものです。
一般的には、今売られている金床というのは殆どが電車のレールの切れ端なのですが、これは鋼鉄製なので硬すぎて、しばしば鉋の刃が割れてしまいます。考えてみれば当たり前の話で、硬い金床の上に据えたカンナの刃を、これまた硬い金槌で叩くのですから割れて当然なんです。が、しかし、多くの人が何も考えずレールの金床を使っていてカンナを割ってしまっています(時々Facebookなどでもそういう投稿見かけますね)。刃が割れてしまうと、三ミリとか五ミリも刃を研ぎ減らしてしまわないと治りません。どうやら世の中には道具を壊すのが好きな人が多いようです。裏が出ていないことには鉋として機能しないわけですから、砥石を平面に保つとか天然砥石が良いだとかそういうこと以前に大事なことのはずなんですけど、結構テキトーな人が多いですね。砥石にこだわるより、こういう基本的な仕立ての道具にこだわる職人のほうが信用出来ると思います。
昔は地金という軟鉄で出来た金床が普通にあったそうですが、今はそういうものは手に入りにくいので、自分でなんとか工夫をしないといけません。樫や黒檀などの堅木を使うのも一つの手ですが、鉛のほうが、叩いているうちに裏の形に馴染んできて使いやすいと思います。叩き割れは殆ど無くなります。
作り方はごく簡単で、屋外でカセットコンロに空き缶を置いて火をつけて、釣具屋さんで売っているオモリを投入して溶かす→放置して冷やす、これだけです。
ただこれは、臭いも出ますし危険でもありますから、この方法が難しい場合には次善の策があります。それは、鉛の板(Amazonでも売ってますし、釣具屋さんで板オモリというのが売っています)を、レールの金床の上の敷いてその上で鉋の刃を叩くというもので、これでも十分に刃への衝撃を和らげることが出来るようです。あとはインゴットという塊のものが売っていますので、それをそのまま台に載せて利用するか、ですね。
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レールの金床でも慣れれば大丈夫、というのも一理あるのですが、その慣れるまでに何回カンナを割ってしまわないといけないのか、っていうお話です。鉛の金床なら、はじめたばかりの人でも殆ど叩き割れの心配がありません。こういうことは道具のことを書いた本にも書いてありません。どうも簡単過ぎることは嫌われるようですね。職人さんというのは、つくづく、無駄に難しいことに挑戦するのが好きな人種だよなぁ、と思うわけです。