少し前のお仕事ですが、丸太→角材→八角形→ハツリ の工程を写真を交えて解説してみます。
まずは皮のついた原木丸太を製材します。丸太からいきなり八角形にすればいいのではないか?、という疑問も生まれそうですが、丸太といっても真ん丸ではありませんし、根元に近い方と先の方では寸法も違います。そのままでは大き過ぎる、ということもありますし、製材して寸法を整えることで後の仕事がしやすくなりますし、製材することで耐久性の高い芯材の割合が多くなるなど、いいことの方が多いのです(皮に近い白い部分は芯材に比べて耐久性が落ちます)。
丸太に大まかに印をした線に従って四角形に挽いていただきました。四角形の柱ですと、四面のうちのどこに一番見栄えの良い面を出すかという微妙な調整が必要ですが、最終的に八角形になる場合はそこまでシビアでなく、丸太の中心が角材の中心にくるように気を使うくらいです。
ここから八角形にする時に、昔からある「さしがね」という定規を使った製図法を用います。
「さしがね」には裏目という、普通の目盛りを√2(1.414)倍した目盛りを振った面がありますので、その目盛りで四角形の一辺の長さを測ります。
ちょっと見ずらいですが、裏目で測って「5寸2分」となっています。
今度はこの「5寸2分」という寸法を、普通の目盛り(表目)を使って角から測って印をします。
これを一つの角から左右に2箇所ずつ、四つの角から全部で8箇所に印をして印同士を線で結ぶと、この四角の材から取れる最大の正八角形になります。
と、いう感じで何だかよくわからないけどメンドクサイ計算とかはしなくても昔からある方法で四角形から正八角形の図面が引けます。お寺や神社の丸い柱もこの四角形→八角形が基本で、そこから16角形→32角形とだんだん真丸にしていきます。
四角形→八角形の場合は、
うまい具合にここが45°というわかりやすい角度になりますので、45°に傾けた機械で加工出来ます(ここでは丸ノコを使っています)。
このように三角形部分を取り除くことを四つの角それぞれで行うと
八角形の出来上がりですね。狙い通り、殆ど赤い部分だけになりましたね。。ここまでは機械的に処理出来ます。余談ですが、以前、某テレビ番組で某ゼネコンの現場で、この工程でチョウナを使います、と実演していましたが……全くの茶番ですね。実演してる人も明らかに不慣れな感じで気の毒なくらいでした。普段は使ってないのバレバレですやん。この工程をチョウナでやることのメリットは一ミリもないです。時間がかかる上に不正確で、チョウナで荒れた表面をもう一度カンナで平らにしないと次の工程に移れないので二度手間です。実際は誰もそんなことはしていないはずです。かなり大きな材でも製材機で八角に出来ますから。現実にそぐわない「伝統技能はスゲぇんだぞ」的なハッタリはいい加減にやめた方がいいと思います。テレビ向けにカッコつけてそういう誤解をバラ撒くから、手道具で何でもさせてもらえると勘違いした若い子たちが宮大工に憧れて入ってきては機械加工が殆どの現実を目にして幻滅して辞めていくんですよ。今はチェーンソーでも何でも便利なものは何でも使って、どうしても手でしないといけない所だけ手仕事していけばいいんですし、それをウソついて隠してカッコつけてもしょうがないです。
と、話がそれましたが、これも機械のがありますし、それでいいって感性の人はそれでやればいいんですが、「手加工で」という方が私のところに来てくれますからチョウナでハツリます。
八面全てをハツると出来上がりです。ハツったものを「名栗(なぐり)」ともいいますから、杉八角名栗柱、となります。
この八角柱は〜
名古屋の美容室「Ripple 」さんの中に立っています。
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