雑感

なぜノミやカンナや機械で削ったものを「名栗」と呼んではいけないのか。

元々、チョウナやマサカリでハツったものが江戸時代くらいから「名栗」と呼ばれていたわけですが、明治に入ってからノミやカンナで削って作ったニセモノが「発明」されて、それも何故か「名栗」という名前で流通しています。全然違うのに。昭和になると機械で削った紛いものまでが「名栗」として売られるようになって、混乱したまま現在に至っています。そもそも違う作り方をしたものを同じ名前で売ること自体が大間違いで、やってはいけない事なのですが、この当たり前の常識が通らない・良識が無いのが建材・建築の業界なのです。言ってみればカニカマを「カニ」として売っているみたいなものです。何故こういうことが起きるのかというと、まず大前提として、

建材・建築業界はウソばかり

ということがあります。他の業界、例えば表示に厳しい法的規制がある食品業界などに比べると、建材・建築業界は規制がユルいので、ほぼほぼ「言ったもん勝ち」の世界です。例えば昔よくあったのは、ちょっと目の積んだ杉の板があれば「屋久杉」と言って売ったり、とか、他所の県から持ち込んだ材木が「秋田杉」とラベルが貼られていたり、そういうことが普通に行われ過ぎて、もはや罪悪感など全く無くて当たり前になっているのが建材・建築業界という魔界なのです。

これだけですと単に「ウソついてるヤツが悪い」ということなのですが、それだけの問題ではありません。例えば文化財の修理などの際に、ハツって作られた「名栗」材料が腐ってしまっていて取り替えないといけない場合があったとします。発注書に「名栗」と書いてあれば、現状ではハツった本物が納められるかノミで削ったニセモノが納められるかは、その人次第ってことになります。もしニセモノが納められたとしても書類上は間違いが無いということになってしまいます。大間違いですが。これは既に実際起こっていて、下の写真は江戸時代に建てられた某寺の濡れ縁の栗の木なのですが、昭和の修理の時にノミで削ったニセモノに置き換わっています。こんなものは江戸時代には無かったはずのものですので、時代錯誤も甚だしいわけです。時代劇見てたら急に信長が懐からスマホを取り出して「み〜つ〜ひ〜で〜、お前何してくれちゃってんの〜?」て言い出すくらい不自然です。こうして歴史が改変・改悪されてゆきます。

誰も気付いてないので、この調子では次回の修理の時にはこの現状が尊重されてまたニセモノが使われることでしょう。いったん書き換えられた歴史を元に戻すのは大変なのです。

ですから、時々「ノミ削りもハツリも機械もんも全部「名栗」でいいじゃないか」というようなことを言う人がいるのですが、ド素人の感想としては勝手に言ってればいいんですが、文化的には全く正しくないということです。こういう人達がなぜそう言うかといえば、自分達が作るニセモノを本物らしく売って儲けたいからです。ですからノミや機械で削ったものを「名栗」と言ってる人達は「文化をぶっ壊す人達」「平気でウソをつく人達」「頭が悪い人達」なので1ミリも信用しないほうがいいです。

 たまたまX(旧Twitter)で見かけたのですが、

https://twitter.com/qw7_ib/status/1824035551647019513?s=46

ホンビノス貝を「ハマグリ」って偽って出してた店があるそうです。似てるから同じ名前でいいだろ?って、そういうもんじゃないですよね。苦情を言ったら無料にしてくれたらしいです。食品業界はやっぱり厳しいです。カニカマをカニと偽って売れば犯罪です。ウソを言えばその代償を払う羽目になる。当たり前のことですが。ニセモノ名栗を売りつける輩ってバレたら返金してくれるんですか?そんだけの覚悟はあるんですか? どうやら無さそうだ。あの連中なら平気で「騙される方が悪い!」って言いそうで怖い。。。

今日の格言

「ウソをウソと見抜けない人は名栗を使うのは難しい」 どっかで聞いたな、これ。。。

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