自分の目で見た古いハツリ跡集

お城編

彦根城

彦根城も他のお城と同じく、解体修理の際に多くの部材が新材に取り替えられているので、古いハツリ跡は少ない。昭和の修理の際に取り替えられた新材のハツリ跡は施工レベルと感性が驚くほど低いものが多く、特に内部のものは屈指のお粗末さなので一目で見分けがつく。天守閣の太い柱が古いもののようで非常に味わい深い。

 

 

 

犬山城

天守閣に入って直ぐの大きな梁のハツリ跡が非常に印象的。しかしこのような整えられたハツリ方は城内の他の部材には一本も見られない。かといって新しい材にも見えないという不思議なハツリ跡。もしこれが当初材で、階段を登る時にすぐ近くに見えるため、見られることを意識してこのようにハツってあるとしたら、非常に興味深いこと。

犬山城はどうも非常に保存が良いようで、明らかに新しい材が少ない。古そうな柱のハツリ跡は彦根城のものに似ている。また、人があまり通らない所の床板に少しだがハツリ跡が残っている。当初材だとしたら非常に珍しいものである。

 

 

 

大阪城

天守閣は昭和の再建(鉄骨造)なので、登って眺めを見るためのお城であり、お城自体に見るべき所は殆ど無い。が。しかし、お堀の周りの門と櫓には江戸時代のものが残っており、とりわけ千貫櫓の床板は必見、というか是非とも素足で歩いておきたい。ただし、床板のほとんどは昭和三十年代の新材である。

差し替え材でも十分ハツリの床板の心地良さが伝わってくる。人が歩かない所に、ほんの少しだけ当初材らしき、磨り減った床板が残っている。

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松本城

痛みが激しく、大きな解体修理を明治と昭和の二回もしているので、古い材は比較的少ない。よく目に付くところにあるハツリ跡は殆どが明治と昭和のあまり出来の良くないレプリカ。よく探すと太めの柱にいいハツリ跡が残っている。

床板は全てプレナー(機械のカンナ)仕上げ。機械の刃跡が所々残っている。同じく戦後間もない時期に修理された姫路城と似た状況。苦しい時代だったのかもしれないけれど、材料は良過ぎる位に良いものを使っている不思議さも姫路城と同じ。オリジナルを尊重しようという気持ちがあまり感じられない残念ところも、これまた同じ。

 

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民家編

 

旧・箱木家住宅

現存する日本最古の民家。柱・梁、見える木が全てハツリ仕上げ。だが、改築されていたものを復元・移築されているので本当に古い材は少ない。床板は殆ど全てが新しい昭和の材だが、旧状に倣おうという配慮を感じる印象深いもの。

鎌倉時代まで遡る柱が何本か残っているので、それと思しき材を探すのも楽しい。

また訪れたいところです。

 

 

 

 

旧・古井家住宅

箱木家に次ぐ古さの、姫路市にある民家。全てがハツリ仕上げなのも箱木家と同じ。箱木家よりは古い材が残っている感じ。ただし新材に付けられたハツリ跡が現代人の意識が強く入り過ぎていて、違和感がある。床板・壁板などは全てがそういう感じを受ける。現代の職人さんと技術者による、やり過ぎパラダイス。

こういうものに惑わされず、ホコリとススが付いた材の奥にうっすら見えるホンモノの古いハツリ跡に昔の人の息吹を感じよう。

 

 

 

日本民家集落博物館

大阪にある民家園。保存状態が良い民家が多いので、あちこちに江戸時代のハツリ跡が見れる。柱は栗の木が多い

丸太を掘り取って作った丸木舟の実物が展示してあるのも貴重。チョウナで掘っていったのであろうか。

 

 

 

奈良県立民俗博物館

大和郡山市にある民家園。広い公園にうまく民家を配置してあり無料で開放されている。大和の土地柄なのか上層農民の住まいが多いせいか、ハツったままの材は少ない。昔の人も、やっぱりハツリのままの凸凹の木は貧乏臭くて嫌だったのかもしれない。丸太梁に栗の木が多用されていて、一見鉋仕上げかと思うくらい丁寧にコツコツとチョウナで打ってある。

 

 

 

尾鷲・土井本家の蔵

尾鷲ヒノキの産地、尾鷲の名家・土井本家の空前絶後のハツリ蔵。床板以外のほとんど全ての材がハツったままの仕上げになっている。はじめは、よくある鉋仕上げを省いたものかと思っていたが、何度か通ううちに、これは絶対わざとやったんだと感じるようになった。鉋で仕上げようと思えば出来るけど、鉋仕上げよりもっといいもの見せてやろう・山の民の実力を見せてやろう、という心意気でやったとしか思えない。寒気を覚えるほどの刃物のキレとハツリの精度の凄まじさ。工芸品的なものなら再現出来るが、このような野趣を伴った原初的な仕事は絶対に再現不可能だ。これを越えようとすれば人間やめなきゃ無理、そういうレベル。その意味でも大変貴重な遺構。

 

 

 

茶室編

 

如庵

有名なハツリ倒した床柱。撮影禁止なので画像は無い。現物は本の写真で見るほど荒々しくなく、年月のせいかフワッとして見える。明らかに鉋で平らに削った部分もある不思議な柱。本には栗と書いてあることも多いが冬目の浮き出た感じがあり針葉樹のようだ。杉ではなかろうか。変転流転を繰り返した有楽さんと同じくらい不思議な柱。外の栗の柱にもハツリ跡がある。

如庵のある有楽苑全体に新しいものだけれど色々なハツリ跡があって数寄屋とハツリの縁の深さを感じる。

 

番外編

忍者の大筒

ほんまもん、だとするとかなり怖いもの。石や砂利を詰めて炸裂させたものらしい。松の丸太を、外側はハツって中をくり抜いて作ったようだ。

 

 

 

 

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