古民家改修の現場に床板を納めさせていただいたのですが、そちらの現場から追加で壁板のご注文をいただきました。
材料が届きましたので早速ハツっていきます。最近はなるべく、外に作業台を据えて自然光の下で仕事をするようにしています。室内で蛍光灯を点けると、どうも自分の影のせいで材料や刃物の入り方が見えにくいように思います。
自然光の下の方が、細かい見落としなども減ったように思います。
床板ならこれで完成ですが、焼きの仕様ですので、焼いていきます。
平らな板ですと、大きなバーナーで炙っていけばいいですが、ハツリの板は凸凹になっているので、小さなバーナーで一マス一マス焼いていかないといけないので意外と手間がかかります。焼き加減も気をつけていないと焼け過ぎてしまうので、加減が結構難しいです。細かい割れというのは、焼き加工の場合必ず入ります。
だいたい均一に焼けました。焼き加減も軽く焼いたり、しっかり焼いたりと色々ですが、これは、しっかり焼いたパターンですね。このままですと触るとススが付きますから磨いていきます。
磨きには真鍮のブラシを使います。鉄のブラシより少し値段が高いですが、ホームセンターなどでも売っています。柔らかさが絶妙なので、こういう磨き作業には丁度よいです。
こういう風に徐々にススが落ちてゆくわけですが、これでススを落とし切れるわけではないです。磨いたところを指でなぞれば、まだススが付きます。ここで例えば、磨き終わった後にホースで水を掛けてススを洗い流してしまう、という方法もあるにはあるのですが、濡らした板を乾かすのに時間がかかり、また、その過程で板が反ったり割れたりする危険もあります。そこでオススメなのが、柿渋を塗る方法です。これですと、柿渋によってススが固まるのでススを落としきる必要もないですし、ススが柿渋に溶けて顔料の役割をするので渋い色合いになります。より黒くしたい時はススを残し気味に磨いて、あっさり仕上げたい時はしっかり磨いてススを少なめにします。柿渋はハケで塗ってサッと拭くだけでいいですね。乾けば完成です。
柿渋は後から発色してきますから、塗った当初はこのくらいでいいですね。後からより渋い色合いになって、焼きムラ・磨きムラも目に付かなくなります。焼き板にニスや化学系の塗料を塗るのは絶対にやめた方がいいですね。木の風合いが台無しですし、一瞬で安っぽい民芸居酒屋風の出来上がりです。
幅210mm 厚み30mmですから壁板として随分豪華なものになってしまいましたが(普通の壁板は厚み10mm程度)、厚い板を張ることで構造的な補強にもなるでしょう。古建築に用いられる板は総じて厚いですが、床にしろ壁にしろ屋根にしろ、厚い板を用いることは構造体を助ける意味合いがあるような気がします。また、杉板は断然性能も高いですから、そういう意味でも厚みがあるのは良いと思います。
どういう感じに使われるのか楽しみです。
こちらの古民家改修の現場は、完成見学会もあるそうですので、日程が決まり次第ご案内します。
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