雑感

カワイイが正義! なのだ

15cm幅の杉板です。四列のハツリの模様が入ってます。前は同じ幅の板に三列模様を付けていました。すると、当然、以前はハツリ跡の一個一個がこれより大きかったわけです。それが良いと思っていました。ハツリ跡が大きいほうがカッコいいしダイナミックな感じがしますから……しかし、これは単なるオッサンの間違った価値観ではないだろうか? と思うようになりました。

 前から時々言われていたんです。作ったもの、ハツったものに女性の方からばかりですが「これカワイイ!」って。その度に私は反発とまではいかなくても、「こんな古臭い技術のものがカワイイわけあるかいっ!」といちいち思っていました。オッサンの価値観はなかなか変わらないんです。これは石器時代から数万年あるような技術で鉄器の時代から数えても二千年以上、北斗神拳より古いんでっせ、それが茶道をやっていた武人の好みによって現代まで生き残ってきて云々かんぬん、って思ってましたけど、それって全部ただの屁理屈ですからね。そういうムダな知識無しで感じるままに「カワイイ!」って思うなら、その感性の方が正解じゃないか、と、思うようになりました。カワイイ、でいいのだ。オッサンの自己満足の美学なんて、どうでもいいのだ。

 たまたま倉庫にずっと前にハツった板が残っていました。

やたら大きくハツってあるわけで、当時はこれがカッコいいと思ってたわけで、そういうことが出来る自分に酔ってたわけで………ただのイタいオッサンやん。。。アホですね。

小さく小さくハツリ目を入れた方が明らかにカワイイわけで、ザクザクしないから床板としても使いやすいわけで、今はこれでええやん、ってなります。

ハツリ仕事っていうのは、本質的にいうと、別に絶対必要なモノではないです。床板はハツってなくても床板として成立しますから。それでもやるっていうのは、やっぱりより感じのいいモノにしていこう、とか、そういう意思のあるところで尚且つ当然予算も余分に必要な訳で、そういう仕事がこなせるイケてる会社さんとしか付き合いないわけです。予算が無くてカツカツみたいビミョ〜な仕事ばかりやってる所とはご縁が無いんです。ある程度、力のある所としか仕事出来ません。近隣にも「木の家やってます」とか木の家なんちゃらのグループに入っている連中がいますが、一回も仕事したこと無いです。なぜなら彼らは田舎の安くてダサい仕事しかしていないので、私に仕事の発注出来るほどの力量が人間的にも技術的にも無いから。類は友を呼ぶ、ので、こういうイケてない連中はイケてない同士でツルむので、ずっと安くてダサい仕事をやり続けるので、イケてる会社がどういうものなのか一生わからない。私はたまたま仕事柄、イケてる会社さんとしか付き合いがないので、イケてる会社ってどういうところなのか、段々わかってきました。

で、私気付いてしまったんです、イケてる事業所の特徴に。こんなこと言うと媚びてると思われそうですが本当のことだから言いますと、私のところに継続して仕事を頼んでくださる工務店さん・材木屋さん・設計事務所さん、そのほとんどが何らかの形で女性の方が活躍してます。ネット販売のお客さんの8割以上は女性の方です。オッサンだけの世界はもう終わってます。昭和からずっと引きずってきた「男のロマン」でやってた家造りはとっくに終わってるんですよ。これ、どういうことかっていうと、オッサンだけのところって結局、世の中の半分は女性なのに、その半分の気持ちがわからない・ニーズも掴めないってことでしょう。そんなビジネスに先があるわけがない。これがカッコいいんだ、とか、これがウチのコダワリだ、とかっていかにもオッサン達が言いそうなゴタクばかり並べてみても、それって結局自分達のコダワリとか美学であって、世の中のニーズに広く応えていこうってことじゃないですよね。景気が言い時分には、世の中の半分のオッサン相手に商売してれば成り立ったかもしれないけれど、今もう無理でしょう。

 材木屋さんとか、銘木屋さんなんかも凋落が激しいわけですが、材木市場に行っても、その生産現場、営業の場においても女性の方を見かけることは殆ど無いですよ。まさに「オッサンが作ってオッサンに売って、それを買うのもまたオッサン」っていうムサ苦しい世界なんですよね。そりゃ、はじめから世の中の半分を排除してるわけですから廃れる一方に決まってるじゃないですか。逆に今までよくそれで生きてこれたよね、としか思えない。

住宅展示場のハウスメーカーの営業なんかも、ご夫婦が来ると旦那の方ばかり向いて話をするのが普通らしいですよ。今時、共働きで奥さんの方が稼ぎがいいケースなんかいくらでもあるんですけどね。昭和のマインドのままなんですよ。

私ね、自分のホームページは自分で作って管理していますから、他の人のホームページを見るのも大好きで相当な数を見ています。どういう人が何を作って、それをどう表現しているか、とても興味があるわけです。どうせこういう工務店は顧客にならないので書いてしまいますが、やっぱり伸びてない工務店、ブログが貼り付けてあるのに何年も更新していないような工務店、イケてない所に共通しているのは、例えば「本物の大工が建てる本物の家」とか「コダワリの家造り」とかいう文言が多くて、どこまでいっても大工が大工が職人が、って主語がいつも自分達でお客さんが不在で、「うるせぇぇ!お前達が主役なのか?」という感想しか出てきません。それが住む人にとってどういうメリットがあるのか、とか、相手の側に立った“優しい”目線がまぁ無い、典型的なオッサンズワールドなのですね。そんな世界には誰も用は無いし滅びてしまえばいいんですよ。たしか、何ちゃらネットも「職人がつくる」って真っ先に書いてますね。あくまで自分達が主語なんですよ。お客さんなんて目線に入ってない。自分達がやりたいモノ作りをさせろ、っていう傲慢さが滲み出ちゃってますやん。こういう人達が「伝統工法を世界遺産に!」っていう無益な活動をやるんです。

個人的な経験から言いましても、「男らしさ」を前面にだして常日頃は威勢のいいこと言ってる連中に限って、いざ責任が発生すると急に弱気になる、とか、面倒くさいことは人に押し付ける、とか、お金の話になると急にケチ臭くなる、とかロクなヤツがいなかったですよ。そういう偽りの「男らしさ」に酔ってれば乗り切れた時代はとっくの昔に終わったんですよね。そういう人間はもう皆んなお払い箱じゃないですか。世間を騒がしてるN氏やM氏の件もそうでしょう。あれも、個人の資質や業界の悪習やら色々あるんでしょうけど、結局「価値観をアップデート出来なかったオッサンには仕事どころか生きる場所すら与えられない」っていうことに尽きるんでしょう。生きる場所が残されてるうちに危機感持って変わっていかないと、マジでヤバいと思います。

 かつては「オレは女子供に媚びたモノ作りはしない」とイキってた大工もいましたけれど、その人が今何やってるかっていったら、奥さんに三下り半突き付けられて離婚して仕事も無くてプラプラしてますよ。女子供に媚びるどころか、女子供を守れてさえいない。世の中がお前を必要としていない、そういうことやぞ。。。

 景気が良く無いですから、仕事が無いって言ってる人も多いですが、その内訳をよく見れば、やっぱり“オッサンのオッサンによるオッサンのための”商売してたような人達が多いです。

 なんだか暗い話になってしまいましたが、今の木材・建築業界を見ると、まるで“自分達が負けたことにすら気付いていない敗残兵”のようです。人口はこの先減る一方ですから、この調子だと、まだまだ衰退するでしょう。

 逆に言えばですけど、今まで相手にもしてこなかった人口の半分にちゃんと向き合ってニーズをお伺いすればいいわけですから、そこにはちょっと希望がありそうな気はいたしますけれどもね……………知らんけど。

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