時節柄、なかなか出掛けることも出来ませんので、過去に行ったところのものを幾つか取り上げて、考えてみようと思います。
2018年6月ですから、だいたい2年くらい前ですね。京都の仙洞御所に名栗材(クリの木をハツったもの)が使われているとTwitterで見かけたので出掛けてきました。遠くから見ると、あの池から立ち上がっている木なんだろうな……と思って近づくと…
勘のいい人ならこの辺りで「おやっ?」と感じざるを得ない。
さらに近づいてみると…
いちおう六角名栗ぽいものですが、違和感増し増し。。まずは、ハツリ(風?)模様が均一過ぎる。。
はいっ、これで確定、機械加工のバッタもんですね。。。回転する機械の刃の跡がしっかり残ってます。
最近こういうものを見つけたのですが…
(見た目は「ほぼカニ」ですが、味はほぼ普通のカマボコでした)
これにならえば、上の機械ハツリ(風)は、「ほぼハツリ」「ほぼ名栗」*名栗ではありません!! という感じでしょうか……
仙洞御所でもこれでええんか???
ここで最初に感じた違和感の正体がわかってしまう。それには、どのようにしてこの機械加工がされたのかを考えてみないといけない。
こういう機械加工は
このように平らな定盤の上に材料を置いた大型の据え付け型の機械で行われます。
回転する刃物で模様をつけていく感じですね。
上の部分の動きは常に一定しているわけです。(これが模様が均一過ぎる理由です)
ただ、動きが一定しているということは、例えば、こういう曲がった材料ですと
機械がクラッシュしてしまって使えないことになります。
つまり、あくまで材料は真っ直ぐ真っ平でないといけない。
しかし、普通、栗の木なんていうのは、こんな風に
少しは曲がっているのが普通なんですね。
ところが、機械で加工するものだから真っ直ぐな材でなければいかん、と、それで真っ直ぐな材料になっているんですね。つまりやってることが全くのデタラメなんです!材料に合わせて加工するんでなしに、加工する機械の都合に合わせて材料が真っ直ぐにされているわけです。
曲がった木を使えば、例えば、このように
少し外側へ張り出すように建てれば、力強く見えるし安定感も出ます。ところが機械で加工する前提で、機械加工に合った真っ直ぐな材が選定されています。
ここで、もう一度仙洞御所のを見てみますと、
材料が真っ直ぐ過ぎて、全く安定感が無い、これが最初に感じた違和感の正体ですね。いいものを見慣れていればすぐに気付きます。
まるで鉛筆を(鉛筆も六角形です)
池にブッ差したみたいになってます。。。
と、こういうことなんですね。
細部を見ますと、
細かいところの仕事はほんとに丁寧で、それだけに惜しいのですね。一般的によく勘違いされているのが、例えば「匠の技」なんていうと細かい繊細なところを言うのが常ですが、それは素人考えです。もっと大きなところ、材料選ぶところで間違ってたらいくら小手先の技術が冴えていても仕事は救えないもんなんですね。
仙洞御所ですから、当然、宮◯庁の管轄なわけで、宮◯庁といえば戦前なら宮家の住まいの普請のための図面を引けるような技官もいたそうですから、その当時ならこのようなこともなかったでしょう。今はどうせ業者に丸投げで、施工を監督する能力すら無いのでしょう。なんだこのザマは。これを官僚の劣化と呼ばずになんと呼べばいいのか、情けない限りでございます。それもこれもここ何十年かの間「公務員の無駄ガ〜」などと散々公務員叩きを寄ってたかってやってきて、人員と予算を削りまくった結果なのでしょう。数が減れば当然質も劣化する。
ただ一つ良いことがあるとすれば、僕が材料を収めたところのお客さんは「仙洞御所ですら機械加工のバッタもんを使うのがせいぜいだけれど、ウチのは本物でっせ〜」て自慢出来ることくらいでしょうか……稀少価値・付加価値爆上がりや……
その意味では、宮◯庁さん堕落してくれてありがとぉぉぉぉぉぉぉぉ。
機械名栗の床が展示してあるのを、大手ハウスメーカーの大阪のサテライトショールームで見ました。
手仕事との違いに興味が湧きました。
所詮、ハウスメーカーで家を建てようという人には、この程度の物でいいんでしょうけど、
本物を知りたくなるキッカケにはなりました。
違いを解説していただき、納得できました。(パッと見て違いを見抜く眼力は未だありませんけど。)
なんでもそうでしょうけど、本物を手元に置いておけば、見る目が育つと思います、